2017/10/02

TriKai買い物紀行・アライヘルメット MZ-F 61.62cm

MZ-F購入前、直近まで被っていたヘルメットはOGKカブトのアヴァンド2
アライ製品に限定すると、ずっと昔にSZシリーズの廉価版、SZ-Fを被っていました
TriKaiの感覚と本レビュー中の表現は、この2つのヘルメットの使用経験を踏まえたものです

ある程度使い込んだ状態で作成したインプレッション記事のため、
写真のMZ-Fは完全新品ではなく、
すでに汚れや飛び石による小キズがついている状態です
あらかじめご了承ください



バイク乗車用ヘルメット、そのシェルの設計方針は2種に大別されます

ひとつは剛性と柔軟性のバランスを取り、
必要十分な対貫通性を確保しつつ、
衝撃に対してはシェルと内部ライナー双方でクラッシャブル構造を形成し、
安全な範囲での変形を許容することで、
高い安全性と小型・軽量化を両立しよう、というもの
ECE、DOT、そして本邦の現行JISなど、
多くのヘルメット規格の要件はこちらに近い考え方です

もうひとつは、シェルとライナーとで役割をきっちりと分離し、
変形を許容せずにとことんシェルの剛性・靭性を高め、
衝撃に対してはまずシェルを滑らせることでこれを緩和、
さらに分厚い内部ライナーによって残りを吸収するという、
二段構えの守りによって徹底的に頭部を防御しよう、というもの
ご存じの通り、アライは古くからこちらの考え方を採用し続ける、
スネル規格ヘルメットという分野の世界的なリーディングカンパニーです

そのシェルの強固さは、スイカの熟れ具合を見る要領で、
頭頂部付近を軽く平手打ちしてみると、よく理解できます
JIS規格などのみを満たすシェルからは「バシ、バシ」という響きを感じますが、
アライのシェルからは「トン、トン」という硬質な感触が返ってきます

アライヘルメット
MZ-F
http://www.arai.co.jp/jpn/openface/mzf_t.htm


今回のレビュー対象、MZ-Fも例外ではありません
アライのラインナップの中では廉価帯の製品ですが、
衝突安全性に関しては妥協がまったく感じられません

その真価については、残念というべきか幸いというべきか、
日々の使用の中ではテストすることができませんが・・・
代わりに被り心地や使い勝手について、掘り下げていくことにしましょう



外観・内装



アライが「R75 Shape」と称する、つるんとした卵型のシルエット
XL相当サイズということもあり、シェル自体はそれなりに大型なのですが、
余計な突起が無いためか、見た目はむしろコンパクトです
トリシティ125のメットインには、余裕をもって収まります


MZシリーズが持つ、オープンフェイスヘルメットとして唯一無二の特徴
それがこの前方へと延長された、大型のチークガードです
当然、内部のチークパッドも延長されており、
「フルフェイスに匹敵するホールド感」が謳われています


内装はチークパットを除いて固定式
シンプルな形状で、そのまま被っても変な髪形にはなりにくい印象です
インナーキャップを併用するとなお良し
汚れやすいあごひもカバーまで固定式なのは、ちょっとした減点箇所です


あごひもの留め具はDリング式
バックル式に比べると着脱が手間ですが、高強度かつ微調整が容易



シールド上部のブローシャッター、
前2つ穴、後ろ2つ穴という標準的なベンチレーションに加え、
左右下部にひとつずつ、こめかみ周りの熱気を吸い出すホールが設けられています
頭頂部のドレンホールはありません

後部ベンチのシャッターは中央の大型レバーで、一括して開閉可能
グローブをした手で小さなスイッチを探る必要はありません



被り心地

薄めの固定式内装に、大型のチークパッド
深く、かなり硬めの、がっしりとした被り心地です

チークパットが強く頬を圧迫するため、
シールドを上げた際の見栄えは少々気になるところでしょう
なおTriKaiはもともと不細工ですので、そんなに影響はありませんでした
・・・ぐすん

チークパッドの厚みがオプションとして変更できるため、
ホールド感はある程度の調整が効きます
上位モデルが採用する「冷・乾」高機能内装仕様への変更も可能です

ベンチレーションの効きはまずまず
上部の左右2組は、とりあえず熱気を籠らせない程度の能力を持っています
優れているのは後方下部のもので、
耳の周りに冷気が通っていることがはっきりとわかります
このおかげで、頑丈な構造でありながらなかなかの解放感があります

オープンフェイスの宿命として、
シールド下からの風の侵入がそれなりにありますが、
風切り音はそこそこのレベルに抑えられています
これは高剛性シェルの副次的なメリットでしょう
一方、内部音の籠りは特に気にならない程度です

記憶がだいぶ古いのですが、
重量がSZ-Fよりもやや軽くなっているような気がします
手に持って比べた限りでは、アヴァンド2とそれほど変わりません
素材などが改良されているのでしょうか
往復500kmの長距離を走破しても、首にはまったく疲労が来ませんでした



気になった点

を、ズバズバと指摘した結果、
その製品のファンから顰蹙を買うのが、
TriKaiお決まりのコースです・・・

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・シールドロック機構の操作に慣れが必要

シールドの左下に指をかけ、外側に押し開くことでロックを外すおなじみの機構ですが、
MZシリーズの場合はそのチークガードの長さゆえ、
全閉状態で指をかけられる部位とベースにあるロック部との間に距離があるため、
かなり外側へ、思い切ってぐいっとシールドを曲げてやらないと、ロックが上手く外れません

慣れるまでは戸惑いました
慣れた後も、急いで操作する際には少々不便です

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・細かな装備、主に可動部の仕上げが微妙

ヘルメットの機能として最も重要な、
シェル本体の仕上げと信頼性については他の追随を許さないアライですが、
反面、付属する細かな装備品の、特に可動部の仕上げに関しては、
意外と割り切られている印象が以前からあります

今回のMZ-Fでも、
右のブローシャッターが固着しており、
表から開けようとしてもびくともせず、
結局裏から爪楊枝で押し出して開きました
その後、何度も開閉を繰り返すうちに部品が馴染んできたのか、
きちんと開閉できるようになりました
SZ-Fでも同様だったのが懐かしい・・・

出荷時の検査を疎かにしているとは思えないので、
甚だしく精度が悪くて使えない、というケースは皆無のはずです
ただ一応、箱から出した段階での各部のチェックと、
その後の慣らしはきちんとおこなったほうがいいでしょう

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・Pinlockレンズの設定が無い

やはり付属品・付随機能の問題ですが、
なぜかアライは頑なに、
オープンフェイスヘルメットのシールドへPinlockレンズを設定しません

MZ-Fはベーシックラインの商品ですからまだ納得がいくのですが、
2017年10月現在、
オープンフェイスラインナップの最高峰であるSZ-Ram4Xにさえ設定が無いどころか、
改良による取り付け部追加の気配もありません

果たして、曇りの発生頻度はフルフェイスとオープンフェイスで違うものなのでしょうか
他社はヘルメットのタイプを問わず、基本価格帯や廉価帯の製品にも、
Pinlock対応シールドの標準装備を進めています

あるいは何か、採用をためらうアライ流の理由があるのかもしれませんが・・・
そこはインナーサンバイザーに対するプロシェード・システムのように、
アライ独自の回答を出していただきたいものです



SZシリーズとMZシリーズの住み分け

新世代のオープンフェイスとして登場したMZシリーズですが、
在来製品・SZシリーズを代替するものではないらしく、
2017年10月現在、両シリーズの併売が続いています

確かにMZのがっしりとしたホールド感は魅力なのですが、
オープンフェイスならではの解放感という点ではSZに分があり、
まだまだ商品としての寿命が残っている、ということなのでしょう
女性ライダーの場合は、メイクへの影響も考慮する要素に入るはずです
むしろMZの直接的なライバルは、基本価格帯のフルフェイス群なのかもしれません

あくまでアライのオープンフェイス同士で購入を比較検討する場合、
MZ-Fに対しては、SZ-Gがライバルとなります
チークガードの長さ以外、実売価格を含めてほぼ横並びの仕様です



まとめ

良くも悪くもアライ流
そのエッセンスをぎゅっと凝縮し、
無駄をそぎ落としたアライオープンフェイスの基本形
実用性と費用対効果に優れた、なかなかの製品です




ワンランク上の安全性とホールド感、
しっかりした被り心地をオープンフェイスに求めるのならば、
このシリーズを選んで間違いはありません
MZ-Fは特に、カジュアル、ないしコンフォートなライディングギアや、
タンデム時のサブヘルメットとして、
有力な選択肢となることでしょう

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【広告ここまで】

※追記
2017年10月4日
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