2017/09/07

分析と考察・トリシティが転倒する様子

今後、新タイヤ・モビシティを履かせたトリシティのインプレッションを続ける上で、
それらの前にひとつ、ご紹介したい動画があります

乗り手としては気の毒に思いますが・・・貴重なサンプル
トリシティが雨天下の交差点で転倒する様子をとらえた車載カメラの映像です



LMW(リーニングマルチホイール)が交差点で転倒(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=3efZAq-LfC4



あくまでトリシティ乗り側の視点から見た場合、
黄色信号にもかかわらず未減速ないし加速して交差点に進入したこと、
あるいはそもそも黄色信号で安全に停止できない速度、
および車間距離にて進行していたことに起因するミスです

画面手前の右折車が動き始めた瞬間、
ヘッドライトの光軸が一気に下を向く=急ブレーキをかけているのがわかります
その状態から、左旋回により回避を試みて、転倒

一見すると普通の握りゴケのようですが・・・
ここで注目すべきは、グリップが破綻した後のトリシティの倒れ方
バランスを崩した瞬間、リアが大きく左へと飛び、
そのまま回転、ヘッドライトが進行方向右を向く形で停止しています
その際、右折車と接触した様子はありません

一般的なパニックブレーキによる転倒と言えば、
フロントホイールをロックさせた結果、
コントロールを失うケースが思い浮かびますが、
このトリシティのケースでは、リアホイールがロックして流れたようなのです
この状況では、おそらくカウンターを当てる猶予さえ無かったはずです

また、これらの様子から、
このトリシティはABS非装着の仕様であると予測できます



こちらの投稿の模式図もご覧ください

LMW車は一般的なスクーターに対し、
前輪の荷重余裕が大きいのが特徴のひとつです
言い換えると、緊急時などで極端に強いブレーキをかけた際、
フロントに荷重が集中しやすく、リアの荷重が抜けやすい
つまりは後輪がロックしやすいということです

また、平常時の前後荷重比が、
一般のスクーターに比べて前輪寄りなのも特徴です
トリシティの場合、具体的には平坦地かつ走行可能な空車状態で前後5:5
そこにライダー2名がタンデムした状態で、概ね4:6付近に落ち着きます
これはスクーターよりもむしろ、MTのネイキッド車に近いバランスです
そもそも相対的に後輪への荷重が軽いため、
そのままでは尚更ロックしてしまいやすい

おそらくはそれをカバーすべく、
後輪ブレーキ操作力の一部を前輪へと分配する「UBS」、
前後連動ブレーキが非ABS車・ABS車ともに標準装備されており、
後輪への過剰な制動力を緩和するようになっていますが、
その効果にも限界があります
それが表面化したのが、この転倒事故ではないでしょうか



いくら安定性に優れたLMW車と言えど、
雨天下でのグリップ力の低下や、ブレーキングによる荷重移動、
LMW車特有の前後荷重バランスといった要素を無視し、
強引な操作をおこなえば、いとも簡単に転倒してしまう例と言えるでしょう
同時に、バイクへのABS導入の有効性についても考えさせられるケースです

実のところ俺は、
めざせ、ころばないバイク。」
を標榜するヤマハ発動機の宣伝姿勢に対し、
ライディングスキル向上の観点から、多分に疑問を感じています
「すべてのライダーのスキルを、1段上へと引き上げてくれるバイク」
だとは思うのですが・・・

少なくとも我々トリシティ乗りは、自身の運転中、
そして他者へとトリシティの操縦性について説明をする際に、
各種の注意点を頭に留めておくべきだと思います

俺、TriKaiも、気を付けて運転・インプレッションをしてまいります

※追記
2017年10月18日
一部改稿、誤字訂正