2016/11/29

祝・トリシティ155、国内紹介ページ立ち上げ &トリシティシリーズ、フロント周りの設定について

いつの間にか、ヤマハの日本国内向けページがリニューアルしている

・ヤマハ発動機 日本公式サイト バイク・スクーター
http://www.yamaha-motor.co.jp/mc/

今までの車種紹介は、スポーツとスクーター、
競技用モデルという大雑把な分類だったが、
各グローバルサイトに表記を合わせ、カテゴリーが細分化された

そして・・・そして、とうとう、

トリシティ155の車種紹介ページが追加!
発売予定年月日は、2017年の1月20日だぜ!
イヤッホオオオゥ!!

・ヤマハ発動機 日本公式サイト トリシティ155紹介ページ
http://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity155/

希望小売価格 453,600円・・・かぁ・・・
初期型125や、カタログ隣のマジェスティSよりも、
かなり高価になってしまっているのが不安だな・・・

ただ、旧型・新型を問わず、125にお金をかけて速くしようと思うなら、
素直に155を買ったほうが、結局は安上がりで幸せになれることは、
過去に散々ホンダ・ベンリィCD50を弄り倒した経験から、断言していいと思ってます
アフターパーツの沼に嵌るくらいなら、最初から大排気量のエンジンと、
専用セッティングの変速機を選ぶほうがいい

ましてや155のエンジンは新世代型、BLUE COREタイプです
というか燃費が、60km/h定地値・WMTCモード値ともに、
旧125より好成績ってどういうことですか・・・

さあ、世の中のお兄さんお父さん方
そして荒川女史的なバイク大好き女性のみなさん
なんとなくバイクに興味のあるそこのキミ
「155ccで小さいから!」
「あくまでスクーターだから!」
「三輪車だし安定性高いから!」
様々な言い訳を駆使して、1台買ってしまいましょう
そしてスクーターの域を超えた、
スポーティーなハンドリングを堪能しようではありませんか

トリ飼い日記は、
あなたがトリ飼いとなることを心から歓迎しますぜ!(盛大なステマ)



まぁ、それはさておき

あまりツッコまれないけれど、
トリシティシリーズのフロント周りは、
一般的なロードスターやスクーターと比較して、
かなり不安定な設定となっていることを、みなさんはご存じだろうか



細かな用語は各々で調べていただくとして・・・

フォークオフセット(相当)量は、
正・負ともにほんの少し、もしくは皆無
フォークの支持構造が特殊なので当たり前と言えばその通りなのだが、
この時点で何かがおかしい

キャスター角は、旧125・155共通で 20°
参考として、現行のホンダ・PCXシリーズが 27° 、
ディオ110が 26°30´ 、スズキ・アドレス110が 25゜ 45´

13インチホイールを採用するNMAXは 26°
現在のリッター級スーパースポーツの主流は 23°~24° である
市販車としては特にキャスター角が立っていたことで知られるビューエル、
その最後期モデルのひとつ、Firebolt XB12Rは 21° だが、
ホイール径が17インチであり、トレール量は 83mm ある

一方、14インチホイールを履くトリシティのトレール量は、
初期型125が 68mm 、155が 67mm しかない
これは10インチホイールを履き、24°のキャスター角を持つ、
2015年型ジョグの 70mm とほぼ同じである

この値を下回る現行販売車は、
57mm のスーパーカブ・プロシリーズ、
およびスーパカブ・デリバリー(MD、郵政カブ)系、
47mm のリトルカブ、 55mm のバーディー50などである
いずれも低速域・狭小路での、
小回り性能や取り回しやすさを特に重視した車種だ

過去の車種では、
マジェスティ125が 33mm という短さだったという
太く低偏平率の12インチホイール&タイヤとの相性は良好で、
コーナーの立ち上がりで出力不足を感じることを除いては、
重さの割に楽しめる運動性能だった、とは知人の弁である
・・・トリシティを見てると、なんというか、血筋を感じるなぁ
一方でトリシティの前タイヤ幅は、
マジェスティ125に比べれば見るからに細い
120/70-12に対し、90/80-14である

こんなディメンションになっている理由として、思い当たるのはひとつ
2つの14インチフロントホイールが生み出す強力なジャイロ効果
過剰な安定性をもたらすこれを相殺して、通常のバイクに近い操縦特性を得るには、
フロント周りを不安定なセッティングへと、大きく振る必要があったに違いない



ホイールのジャイロ効果は当然、回転速度に依存する
車速が上がれば増していき、逆に車速が下がれば減る

低速域では、
不安定なフロント周りの設定がジャイロ効果に勝つことで、
重い車体に対し低出力のエンジンながらも、
とても軽快な運動性能を発揮する

通常のスクーターと比較して、セルフステアの応答性が高く、
後輪のキャンバースラスト発生に対し、前輪がスッと従順に切れてくるのだ
いたずらに低偏平率・広トレッド面幅のタイヤを履かせていないことも、
旋回性能と加速性能に大きく寄与している
この運動性能は、動力性能が不足気味なことさえ除けば、
ロードスターとしても十分通用するものだ

以前のまとめ投稿で、
「スクーターの形をした入門用スーパースポーツ」
という表現をしたことがあったが、
あのときの感想は未だに変わっていない



中速域では、不安定さとジャイロ効果がバランスする
そこからさらに速度を上げるにしたがって、
ジャイロ効果が勝って直進性が上がっていくが、
それでも一般的な二輪車に比べると、操縦入力に対する反応は鋭い

例えば、ニーグリップ可能なロードスポーツ車からトリシティへと乗り換えた直後に、
いつもと同じ感覚で直進しようとすると、
逆にふらつきが収まらないことがしばしば起こる

バイクを直進させようとするライダーは無意識に、
体重移動やカウンターステアをおこなってバランスを取っているわけだが、
トリシティのシャシーは、このわずかな入力をつぶさに拾ってしまうのだ
バランスを取っているつもりでも入力が過剰となってしまい、
逆にバランスを崩しては修正、その際にまた入力過剰で修正、
また修正、修正・・・と、このままではいつまで経っても落ち着かない

対処法は簡単で、意識してまっすぐ走らせようとしないことだ
トリシティ自身が持っている、ジャイロ効果による直進性に行き先を任せてしまえば、
それまでの迷走ぶりが一転して、どっしりと安定してくれる
そのくせ、急に障害物が出現して減速が間に合わない状況でも、
タイヤのグリップに限界までの余裕さえあれば、
尻のひと振りで回避できてしまう機敏さはそのままだ



結果的に、広い速度域での機敏性と安定性という、
本来は相反する各要素を並立させ、高い運動性能を獲得している

オートバイとして非常に理想的な特性を持っているわけだけど、
ネガティブに捉えるならば、あまりにも理想的すぎる、
極めて不自然なハンドリング特性だ、と表現することもできる

少なくともスクーターのそれでは無い
スポーツ寄りのロードスターに近いものではあるのだが、
厳密にはスポーターとも、ツアラーやクルーザーとも、
はたまたオフローダーともつかない、
不思議な特性を持ったバイクだ

もっとも「だから初心者に勧めるのは危険だ」などと言い出せば、
操縦特性が大きく異なる車種間の乗り換えも危険、
例えばビッグスクーターで入門した方がロードスターへ、
スーパースポーツで入門した方がフォワードコントロールのクルーザーへと、
乗り換えることは極めて困難、という結論になってしまうだろう

もちろん、車種に応じた訓練・慣熟は必要だけど、
とことん理想的な動きをするシャシーを知ったうえで、
それぞれクセを持ったシャシーのバイクへと移行していくのは、
ステップアップの手法としては悪くないと思う

あるいは逆に、クセのあるシャシーに乗り慣れた人が、
とことん理想的な動きをするシャシーに乗った場合も、
何かしらの発見があるのではないだろうか
パワーに甘えることができないぶん、滑らかに転がそうとすると、
けっこうなスキルを要求する一面もあったりするシリーズなのだ

※追記
2016年11月29日・30日
12月1日・2日・3日
逐次加筆・修正
2016年12月8日
一部訂正
2016年12月12日
記述漏れしていたバーディー50のトレール量を追加