2017/09/10

少しだけ?試乗?記・トリシティ125

「15,000kmも走ったんなら、少しの試乗じゃなくて思いっきり実用だろう」
・・・というツッコミは却下だ!



・動機

レブルジクサーと試乗記を書いてみて、
これらのテンプレに沿う形で、
改めて我が愛車のインプレッションをしてみようと思いました

購入動機と流れについてはいろいろな事情があり、
説明が長くなるので割愛させてください



・購入前夜

本当は試乗してから買いたかったのですが、
近所の販売店には試乗車どころか、
展示車すら入荷していないという有様でした

特に譲れなかったのは、絶対的な容量は小さくてもよいので、
XLサイズのオープンフェイスがひとつ、確実に収まるメットインを備えていること
数値上は容量が大きくても底が浅い・デコボコしているためにこれができず、
結局リアボックスを取り付けて、初めて実用になるスクーターって意外と多いのです
少なくとも、その点だけは実車で試してから購入したかった

そんな中で唯一、地域でも指折りの老舗に、
白いトリシティが1台入荷されているのを発見
メットインのテストをお願いしたところ、快く承諾していただき、無事に成功

年の瀬、その販売店にて成約と相成りました
赤いトリシティがやってきたのは、ちょうどクリスマスでした



・初見での印象

見た目こそ斬新だけど、オートバイとしてとても堅実な発想で造られているな
・・・それが、トリシティ・コンセプトモデルの詳細を知った時の印象、
そして納車されたトリシティをまじまじと観察して、改めて抱いた感想でした

前二輪にすることでフロントの荷重余裕を大幅に増やしつつ、
1輪ごとのタイヤ幅は細く抑え、ハンドリングの悪化を防ぐ

平行四辺形=パラレログラムリンクを、
一般的なテレスコピック式フロントサスに組み合わせることで、
車体と前輪のバンクを可能とし、
通常の二輪車と変わらない操縦感覚を実現する

通常のスクーターよりもフロントが重くなることを逆手にとって、
前後重量配分を5:5、ネイキッド車のバランスに近づける
そのぶん後輪荷重が相対的に軽くなることに配慮して、
前後連動ブレーキを導入する

エトセトラ・・・

シャシーについての考え方は質実そのものです
オーソドックスな技術・技法の積み重ねで造られている
それがこんな斬新な外見の乗り物になるとは・・・改めて考えても不思議なものです

外見と言えば、どことなく歴代のマジェスティシリーズを想起させる、
流麗なボディラインも一目で気に入りました

それと、ボティカラー
このインプレを書いている時点で、バイクのつや消し塗装はトレンドとなっていますが、
トリシティのマットレッドは、比較的早い段階で登場したように思います



・準備~エンジン始動・発進

取り回しと駐車には、慣れるまで少々難儀します
250cc級のロードスポーツ車に近い重量と重心位置、
旋回外側の前輪が通常のバイクに比べて大回りすることに加え、
ハンドルロックをすると前輪が左右に張り出してしまうからです
メインスタンドがけは軽い部類なのが救いです

駐車中・ヘルメット1個+αに関してはそこそこの収容力を持つメットイントランクですが、
やはり容量が小さく間口も狭いため、
走行中にメット以外の物を収めようとすると不満が出ます
日々の通勤通学で、ブリーフケースなど、それなりに嵩張る荷物を入れたい場合は、
間口の広いメットインを持つ車種にリアボックスを取り付けるほうが実用的でしょう
あえてトリシティを選ぶなら、メットインに入らないものは身に着けなければなりません

キーを時計回りに捻ってメインスイッチを入れます
メーターは速度計を中心にした、シンプルで使いやすいものです
時計は精度が微妙で、だんだん遅れてきます
ぴったり合わせるなら頻繁なリセット、
あるいは実際の時刻より5分早めるなどの工夫が必要です
気温計はさすがにアバウトすぎます・・・これ、必要なのかな?

足着きは125cc級のスクーターとしては決して良いとは言えません
シート高はやはり250cc級ロードスポーツに近い値です
しかし、それがあまり苦にならないのは、
ステップスルー構造のために乗降性に優れていること、
タンクが股の間に無いがゆえに尻がずらしやすいこと、
シート前部のクッションが柔らかくよく沈み込むことなどが、
総合的に作用している結果でしょう
着座状態でさらに3cmほど沈むよう調整されたローシートが、
純正オプションとして用意されているのは好ポイントです

ブレーキを引いてスタートボタンを押すと、優しいエンジン音が目覚めます
暖機を終えたら、さあ発進しましょう



・走行性能

125cc級としては重めの車体に、マイルドな特性の4ストロークエンジン
動力性能は大人しいもので、モアパワー派の方々や、
普段上位排気量のバイクに乗られている方々にとっては不満が残るでしょう
出足、クラッチが繋がる15km/hまでの鈍さはどうにもなりませんが、
一応、クラッチミートの直前にスロットルを一度戻し、
しっかりクラッチを繋げてから再度スロットルを全開にすれば、
交通の流れをリードできる、過不足の無い程度の加速は見せてくれます
最左車線がおおむね70km/h前後で流れているバイバスでも対応できますが、
一番おいしい速度はあくまでも60km/h付近です
ちなみにTriKaiは、このまったりとしたエンジンのフィール、
けっこう好きだったりします

そんな非力さを補って余りあるのが、ハンドリングの軽快さです
少しでも動き出してしまえば、取り回しの重さが嘘のように性格が変わります
さらに特筆すべきは、これが安定性と高度に両立されていることです
倒し込み・一次旋回は機敏に、そこから定常・二次旋回に移るとピタリと安定、
コーナー脱出でスロットルを開けるとスムーズに立ち上がっていきます
直進中に突然障害物が出現しても、尻の一振りと右手の一煽りで、
軽々とスラロームして回避が可能です

ブレーキは非常に強力で、特にフロントは粘りに粘ります
反面、リアは平凡なため、調子に乗ってフロントに荷重を移し過ぎてしまうと、
バランスを崩して転倒する恐れが出てきます
標準装備されている前後連動ブレーキは、
リアへの過剰な制動力を緩和しバランスを取りやすくする効果を持つため、
安易に解除しないほうがよいと思います

一般的なスポーツスクーターが、パワフルで加速力に優れたスプリンターだとするなら、
まるでバレリーナのように、芯の強い足回りを活かして、
踊るようにラインを描いていくのがトリシティのスポーツ性と言えるでしょう



・その他

リアサスのショックユニットには、プリロード調整機能がありません
そのうえでタンデム可能なようにセッティングされているためか、
一人乗りの状態では少々スプリングレートが高い印象があります
スポーツ走行の時はそれでもよいのですが、
長距離移動の際にはもう少し柔軟性が欲しくなります
プリロードを工具無しで調整可能な社外リアショックに交換すると、
このあたりの不満は劇的に改善するでしょう
ただし作業は、サイレンサーも含め、
リア周りをほぼ全分解する、大掛かりなものとなります
なお、ダンパーの効きはクラス相応だと思います

低い積載性の向上に関しては、様々なメニューが存在します
当ブログでもいろいろと試していますので、
右カラムのブログ内リンクを漁ってみてください

購入前夜の項に登場した、在庫の白いトリシティ
長らく販売店の奥に鎮座していましたが、
いつの間にかいなくなっていました
店の親父さんによれば、ある女の子のもとに嫁いでいったそうです
大切にされているといいな・・・
願わくば、足が着かないからって売られてしまうことが無きよう・・・



・まとめ

以前のまとめ投稿にも同様の見解を書きましたが、
スクーターとして最低限の機能性を備えた、125ccクラスのロードスター
あるいは、
ステップスルー・スクーターの形をした、入門用のスーパースポーツ
とでも言うべき存在です

在来のスポーツスクーターとはだいぶ路線が異なりますが、
これはこれで高いスポーツ性を備えています
加えて、荒れた峠道や、舗装のツギハギ・マンホールだらけの市街地で、
これほどの安心感をライダーにもたらすスクーターは多くない

運動性と安定性、斬新さと保守的な設計が共存している、
実に楽しい乗り物です
そのうえ、メット1個はきちんと飲み込めるというのが、また面白い

PCXやNMAXなどと比較すると、
実用性も含めた各性能のバランスが、
あまりにもハンドリングに偏重しているため、
万人に勧められるか、と問われるとNOと答えざるを得ませんが、
この性格がツボに刺さった方は、きっと夢中になることでしょう

日本の公道では、何かと珍車・泡沫モデルと見られがちですが、
少なくとも私、TriKaiは、この子らは泡沫などではないと断言しますし、
ライダーの皆さまには、 泡沫などとは考えてほしくない
そして何より、ヤマハ発動機は、
このモデルを泡沫にしてはならない、と思います



※追記
2017年9月17日
一部加筆